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12. 三次元的に扱う弾性問題

12.2 螺旋鉄筋コンクリート柱


12.2.1 袋に中身を詰めた柱

 お米を運ぶときの入れ物に、以前は藁で編んだ俵を使いました。現在では、紙・目の細かい布網・ビニールなどが使われていますが、積み上げても破れない丈夫さがあります。ここで、思考実験として、お茶の葉を保存する円筒形の薄いブリキ製の茶筒を考えて下さい。これに水を入れて密閉すると、非常に丈夫な柱になります。水圧pは、単位高さ当たり、半径rの茶筒のブリキ板のフープテンションT=prと釣り合います(第1章、1.5節参照)。ブリキの板厚を0.15mm、茶筒の半径を4cm、鋼の応力度をσ=1000kgf/cm2で使うと、水を詰めない場合の耐荷力は380kgfです。茶筒に水を詰めると、同じく引張応力度を1000kgf/cm2まで許すと、水圧分としてp=3.75 kgf/cm2に耐え、余分に約190 kgfの圧縮力を持たせることができます。水に代えて砂を詰める場合を考えます。砂は内部摩擦を持つ材料です。仮に摩擦角を45度とすると、上下方向の圧縮力の35%で横方向に圧縮応力度を作用させれば破壊変形を起こしません。この状態では、砂柱として3.75/0.35=10.7kgf/cm2に耐えますので、茶筒自体の耐荷力を考えるまでもなく、約540kgの耐荷力を持たせることができます。この原理が鉄筋コンクリート螺旋鉄筋柱に応用されます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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