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11. 数理弾性学

11.4 薄板の曲げ変形


11.4.3 薄板の座屈問題と設計上の提案

 板を圧縮応力状態で使うことは、柱を並べた状態でモデル化することもできます。柱と異なることは、幅方向の境界条件も考えることです。結論から先に言うと、実用されている鋼部材の板厚と板幅の寸法比は、弾性座屈を起こさない条件で決めています。SS400(旧SS41)材では、H形またはI形の圧延形鋼の腹部は、圧縮材として使うとき、板幅/板厚の比を約40にします。剪断力が大きくなる曲げ部材は、その比が約60です。曲げモーメントが大きくなる部材は、板の上半分が三角形の圧縮場、下半分が引張場になりますので、その比を約120まで広げた断面が使えます。H形鋼のカタログ製品では、したがって、圧縮柱用と、曲げ材に使う梁用と、二種類の寸法系列があります。山形鋼や、H形鋼、I形鋼のフランジ部分は、板幅方向の支持条件が、一端で単純支持縁、他端が自由縁です。この場合の板幅/板厚比は、約12で使います。降伏点が大きい鋼材では、これらの比を相対的に低くします。薄い鋼板を幅広く使いたい場合には、上述した板幅/板厚比を満たすように補剛材を中間に入れます。40,60,120,12の数値は、鋼構造物の設計者では常識として弁えておきます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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