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11. 数理弾性学

11.2 均質な弾性体の解析モデル


11.2.3 直交異方性の弾性体

 鋼材は、どの向きで切り出したかに関係なく、均質な弾性体と仮定することができます。鋼の圧延材は、細かく観察すれば、圧延方向のクセを持つのですが、これを二次元弾性体として使うとき、部材の性質を左右するほどの影響はないと仮定しています。一方、木材は、方向性のある材料です。木目方向に剛性が高く、横方向は柔らか、つまり相対的に剛性が低くなります。一般的な三次元の連続弾性体を扱う場合はめったにありませんが、力学モデルとして方向によって弾性係数の異なる直交異方性弾性体を考えることがあります。これは、独立な弾性常数の数は9個です。二次元の直交異方性の場合には4個です。この応力と歪みの関係式は、弾性条件ですが、一般化したフックの法則に位置付けます。普通の金属版は、材料力学では二次元の等方性材料として扱います。合板、通称で言うベニヤ板(プライウッド、plywood)は、直交異方性の板と見なせます。直交性は、座標軸方向の応力成分が剪断歪みには関係しない条件が成立するときを言います。座標軸方向の応力度によって、その方向と直交する方向に、ポアソン比に相当する横歪みが出ないモデルも考えられています。合版は接着剤で固めてありますが、すだれを縦横に組み合わせた性質の板構造は、剪断剛性が非常に小さな二次元弾性体です。これらのモデルは、構造物としては、薄い板材を縦横のリブ材で補強し、マクロに見て縦横の剛性が大きく異なる直交異方性板として解析することもあります。これらの材料を使う解析研究は、材料力学の課題ではなく、構造力学の方で主に研究されています。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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