目次ページ  前ページ 次ページ

11. 数理弾性学

11.2 均質な弾性体の解析モデル


11.2.1 解析の条件

 力の受けても壊れないように材料を使う範囲ならば、同じ使い方は、いつも同じ変形の性質を示します。これは再現性があることです。材料力学の研究は、実際の材料を使った実物での実験事実と、理論的に扱い易い数理モデルとを組み合わせて研究が発展してきました。材料が破壊されれば、そこで再現性が途切れます。破壊現象は例外が起きた場合と割り切って、再現性の有る範囲に限定しても、多くの研究課題があって、数学的な興味を引いてきました。弾性体を数学的に解析する条件は4つあります。力の@釣合条件(equilibrium condition)、力と変位の関係を扱うA弾性条件(elasticity condition)、B境界条件(boundary condition)、そしてC適合条件(compatibility condition)です。この全体を構成側(constructive law)と言う用語を見るようになりました。個別に説明を補います。弾性条件は、フックの法則の拡張と考えます。境界条件は力と変位の両方があります。例えば、支点では、或る方向の変位が0である、また、梁や板の縁では曲げモーメントが0である、などです。適合条件は、幾何学的な意義があります。弾性体に複数の注目点を考えたとき、注目点間で歪み、または変位があっても、相対的な位置関係は変化しない、とする条件です。例えば、ゴム板に図形を描いて伸縮させるとき、線が切れる、交差が生じる、などが起こらない条件と考えるとよいでしょう。弾性体の解析は、幾何学的な次元の順でも分類します。最初は、線状の部材の引張と圧縮を一次元の問題として捉えます。これに使う弾性条件が古典としてのフックの法則です。ヤング率は、実験的に求めます。平面内の力と変形を扱うと二次元です。これを一次元の問題の応用として扱うのが、トラスと梁の解析です。このときに、釣合条件と境界条件が必要です。平面図形で表されるような均質な連続弾性体の、その平面内の応力と変形を扱うのが二次元弾性体です。このときの弾性条件にはポアソン比が必要になりますが、これも実験で求めます。立体構造になった連続体を一般的に扱うのが三次元弾性体です。実用的には境界条件が簡単な場合の解析が主に扱われます。板の曲げは、扱う弾性体が二次元の形状であっても、その面に垂直方向の変位を扱うので三次元の弾性問題に分類します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

前ページ 次ページ