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11. 数理弾性学

11.1 弾性体の数学モデル


11.1.3 線形理論が実用的であること

 この章は、材料の応力と変形を扱う数学理論の紹介です。具体的な問題の解法については深入りしません。数値計算も例示しません。個別の問題は多くの研究者が論文を発表しています。何かのトピックを調べるには、論文の検索サービスを利用します。それらの論文を理解するとき、この章で説明してある基礎的な解説事項は、省いてあるのが普通です。理解を埋めるには、専門ごとの啓蒙書・教科書などを参考にしなければなりません。ただし、この目的の名著(例えばティメションコ)は多くありません。線形理論を踏まえると、多くの実用的な理論を使うことができます。とりわけ重要なものは、保存系としての性質であるエネルギー法の応用です。線形であるとき、影響線解析や重ね合わせの方法が使えます。線形理論が応用できれば、再現性が保証されますので、未だ一度も実現していない構造物の設計に挑戦することができます。現在でも健全なイギリスのフォース鉄道橋は、保守的な経験主義にこだわれば、絶対に建設できない、超巨大な構造物です。しかし、また、フォース橋を超えようとして計画されたカナダのケベック橋が、線形理論の盲点である座屈で崩壊する経験も技術史に残りました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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