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11. 数理弾性学

11.1 弾性体の数学モデル


11.1.2 力の実体は分からないこと

 力学は、力を扱う学問ですので、そう呼ぶのですが、力の理解は難しいところがあります。一般力学では、力をF=mαと定義します。重さは、我々が感覚的に理解できる力の代表です。これは重力の加速度を掛けた単位ですので、理論的に扱うときは力のSI単位であるニュートンが提案されるようになりました。これが、典型的な理論と実用との間の解釈問題として議論になりました。代数式を扱う限りでは問題にならないのですが、数値で理解する段階で混乱します。もともと、力は眼に見える実体がありませんので、力が作用している結果として起きている変位や運動を見て、間接的に理解しなければなりません。部材内部で作用している力が応力です。実際にどのようになっているかは分かりません。これが不静定(statically indeterminate)の概念です。そこで、或る適当な仮説を立て、数学的に便利に扱うことができる理想的なモデルを考えて解析します。実際現象を正確に表すような精密なモデルを考えることは、科学的な態度ですが、実務に応用するならば、なるべく単純な仮説の方が勝ります。この判断に関して、理論家と実務家とがしばしば対立します。材料力学は、材料を均質な弾性体モデルと仮定し、解析原理式の出発をフックの法則に置きます。複雑な現象を説明するときの実用的な方法が幾つもあります。例えば、変形が大きくなるとフックの法則である線形弾性の性質から逸れますが、これを線形化して扱う考え方が、例えば、接線弾性係数や換算弾性係数です(5.2.2項参照)。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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