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10. 衝撃・振動・疲労

10.5 疲労実験データの整理


10.5.5 ランダムな外力の評価方法

 疲労は、材料内部の塑性変形のエネルギー受容能力を食い潰す現象と捉えます(10.3.2節)。そうすると、50万回の疲労強度と言うのは、一回の繰り返しで50万分の1のエネルギーを消費する計算になります。種々の大きさの荷重がランダムに作用するときは、個別の消費量を全体で積算して、その大きさが或る一定値に達したところで疲労破壊が起こると仮定します。機械装置は、荷重がランダムに変動することを考える必要が多くありません。鉄道橋は、或る程度、通行する最大荷重の大きさと回数とを求めることができます。鉄道は、重量の大きい蒸気機関車や電気機関車の利用に代えて、電車化が進みました。これは車両を軽量化しますので、既存の構造物の耐久性が向上したことが、保線の現場では実感されています。新幹線の車両も初期の重量から25%も軽量化が進みました。一方、道路橋では、逆に、車両重量も通行量も増加しています。交通量の調査や予測は行われています。しかし、疲労の影響を考えるときは、通行車両の重量の実態も調査しなければなりません。この調査研究は未だ多くありません。橋梁の設計示方書で規定されている許容応力度は、実質的には、疲労限を超えない範囲に設定します。これは、経験に基づいて、降伏点の約1/2です。1993年までは、一等橋・二等橋の区別があって、二等橋の荷重は、計算上一等橋の70%としていました。時代の推移によって、実質の自動車荷重が増加するにつれて、同じ交通量の環境では二等橋の方に疲労が多く発現する傾向が見られるようになりました。これは、実際の応力度が疲労限を超える確率が増えたから、と解釈することができます。その原因となるランダムな繰り返し荷重の実態を測定することは難しいのですが、実測データが得られた場合、その大きさと出現回数の統計量を、解析に向くよう整理しなければなりません。これは案外面倒なものです。遠藤達雄・松石正典は、不規則に大きさが変動する荷重を評価する方法として、レインフロー法(雨だれ法;Rain Flow Method)のアルゴリズムを1968年に発表しています。この手法が近年になって改めて評価されるようになりました。(ここでは、解説は省きます)
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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