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10. 衝撃・振動・疲労

10.4 疲労試験の難しさ


10.4.3 荷重を制御する試験機の設計が難しい

 疲労試験の計画は、三つの問題を解決する必要があります。第一が試験機の開発です。普通に使う材料試験機は、試験体に強制的な変形を加えて、そのときの抵抗力を計測します。破壊したときには力が下がります。疲労試験の場合は、荷重の方を一定振幅で何回も繰り返すような装置を工夫して、破壊が生じたときの回数を数えます。健全な状態の材料であれば、変形が小さいのですが、破壊して大きな変形が起きても、力が作用したままの状態が続くと、試験装置の方にも障害が及ぶ危険があります。実際に材料が使われている個所は、部品単独の破壊で済むのではなく、行き場がなくなった力が、連鎖的に他の個所まで巻き添えにする破壊があるので深刻な問題になります。第二は、荷重の加え方です。普通の静的な材料試験機は、引張試験状態のまま逆向きの圧縮試験ができません。ヴェーラー(A. Woeler, 1819-1914)は、当時の鉄道車両で頻発した車軸の疲労破断を研究するために、回転曲げ疲労試験機を開発しました。これは両振れ応力度を受ける試験装置として、現在でも普通に使われている疲労試験機の原理です。ただし、試験体を丸棒に製作する制限があります。また、断面図形の計算上の縁応力度を使いますので、理想的な引張・圧縮応力度試験と同じデータになるとは言えないところがあります。第三は、繰り返し回数の制御です。100回程度までの繰り返し載荷試験であれば、何とか手動で制御できますが、何万回ともなれば、自動化が必要です。仮に一秒一回の繰り返しならば(60rpm)、100万回は連続運転で12日間掛かります。一般論として、疲労試験は、実物を使う試験が理想です。これは実際には難しいので、実際現象ごとにモデル化して実験する装置と設備に工夫を必要とすることと、試験の実施に時間と費用がかかります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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