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10. 衝撃・振動・疲労

10.4 疲労試験の難しさ


10.4.2 繰り返し回数の見積り

 経験的に言えることは、繰り返して作用させる力の大きさが小さければ、疲労が進まないことです。回転する機械部品、例えば自動車のエンジンは、一分間に何万回転もしますので、繰り返し回数は非常に大きな数になります。使用状態と同じ条件で再現実験をするとなると、破壊するまでの試験期間を予測することができません。したがって、少ない回数で疲労破壊が発現するような加速試験を工夫します。普通は、実用される状態よりも大きめの応力度振幅で実験します。繰り返し回数が一回であるのが静的な材料試験と見なします。この疲労強度を降伏点とします。鋼材は、比例限界までは理想的な弾性的な性質があると見なします。数回から百回程度の繰り返し回数での破壊を低サイクル疲労として研究することがあります。例えば、大地震などで構造物が大きな振動変形を受けても、悲劇的な崩壊をしない限度を知る目的に使います。鉄道橋の主構造の疲労設計をするときの回数は、列車の運行回数を参考にした200万回を一つの限界に設定していました。機関車の重量が大きいので、主構造の疲労を支配する回数を列車単位の運行回数にしました。一日30往復とすると1年で約1万回、耐用年数を100年とすると、100万回です。一方、道路橋では混合交通であって、最大重量車が定期運行する状態を考えることができません。道路橋の設計では、従来、疲労を考えなかったのですが、自動車交通量が増え、重量車の割合が多くなったこともあって、特に床組みで疲労による劣化が顕在化しました。設計荷重を低めに抑えた二等橋は、交通量が少ない個所に架設されるのですが、一等橋並みの交通量にさらされると、疲労の進行が早いことも経験されるようになりました。しかし、現実の荷重の実態は良く分かりませんが、200万回の限界設定とは考え方を別にしなければなりません。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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