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10. 衝撃・振動・疲労

10.3 疲労破壊の全体概念


10.3.3 エントロピーと言う概念がある

 一般的に見れば、エネルギー(例えば電力)の、保存と取り出しを効率的に制御する方法について、多くの研究開発が行われています。材料の弾性エネルギーは、保存と取り出しを目的としません。熱力学は、エントロピーを、保存できなくて「消費するエネルギー分を絶対温度で割った単位」で定義します。エントロピー増大の法則(熱力学第二法則)があって、再利用のできない熱やごみに一方向に進行する法則です。材料の破壊は、連続体を二つ以上に分けますが、これをエントロピーの増大とみます。材料の劣化や破壊は、エントロピーの増加現象と捉えます。温度が低い状態で使うと早く傷みます。低温脆性は、この見方ができます。このエントロピーの概念は、情報工学の方にも応用されるようになって、複雑さを表す概念に使うようになりました。情報量は減ることはなく、乱雑さも増えるばかりです。粉砕は、エネルギーを使って粒に分解します。砂利よりも砂の方がエントロピーは大きいことになります。砂利や砂の粒度分布は、粒径分布の乱雑さを統計的に扱いますので、エントロピーを定量化する一種の表し方です。岩石などを粉砕すると、全体の表面積が増えます。セメントの粉末度は単位重量当たりの表面積で計量しますので、表面積がエントロピーを代表させる量になっています。何かの材料をエネルギーに変換して利用できるとき、エネルギー資源(resource)と言います。利用するために費用が掛かり過ぎるのであれば、経済的には資源とは言いません。破壊は資源を消費します。現代は、ゴミを出さないか、ゴミも資源として再利用することを考える時代になりました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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