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10. 衝撃・振動・疲労

10.3 疲労破壊の全体概念


10.3.2 破壊させるにはエネルギーが必要

 理想的な弾性体は、力が作用すると、それをポテンシャルエネルギーとして内部に保存する性質があります。これは再生可能なエネルギーです。現在では殆ど使いませんが、ゼンマイ式の時計を考えると分かると思います。ゼンマイは、一週間巻き、二週間巻きのように、長い日数に使えるものが高級品です。この違いはゼンマイバネの長さを長く使うことで実現させています。このことは、連続体としての弾性体をエネルギーの入れ物に使っています。保存可能なエネルギーの量は、体積に比例します。材料を贅沢に使うと、丈夫で長持ちし、安物はそれをケチるのですぐ壊れるという一般的な常識があります。外から加えるエネルギー(仕事)が弾性体内部に保存できる受容限度を超えると、超過分のエネルギーは、塑性変形に使われます。これにも相応のエネルギー受容限度があって、それを使い切ると破壊します。脆性材料は、塑性変形分に使うエネルギー受容限度が小さい材料です。疲労は、繰り返して応力が作用する環境にある材料が、塑性変形のエネルギー受容能力を食い潰す現象と捉えます。外見では分かりませんが、材料の性質が脆性化していきます。砂利や砂などは、弾性も殆どありませんし、塑性もありません。外から加えた仕事は、粒を小さくする破壊に使われるか、内部摩擦の作用で熱に変ります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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