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10. 衝撃・振動・疲労

10.3 疲労破壊の全体概念


演習例題 10.1

図10.3 重錘の落下による撓み図
 (1) 図10.3において、ABは、長さの弾性的な鋼棒である。A点で固定され、Bにフランジがついている。錘Wは、棒をガイドとして、高さhから落下させる。錘は、衝撃的にBを介して棒に力が作用し、或る最大撓みδを生じる。この撓みを求めよ。ここに、鋼棒の断面積A=20cm2、ヤング率E=2.1×106 kgf/cm2、W=2t、L=5m、h=5cm、とする。
(2) 錘の衝突後はリバウンドで錘は跳ね上がり、或る高さh’に戻るとする。現象としては、この高さからの落下が起きて、何度かの衝突が繰り返される。リバウンドによる位置エネルギーが消費される分は、鋼棒の運動エネルギーになり、これは鋼棒の縦振動になる。この振動数と加速度(応力波)を求めよ。

解説:
 この問題は、段階的な思考実験に適しています。まず、第一段階として、静的に錘Wを吊り下げたときの鋼棒の解から始めます。断面の応力度をσ、そのときの撓みをyとします。    
錘Wが最初の衝突で静止したとき、「錘の位置エネルギー分W(h+δ)が棒の弾性エネルギーと等しい」とする条件を考えると、下の式が得られます。
   
この式は、δの二次式です。解は下の式です。ここにyは、上の静的な撓みです。
   
上の式は、次のように解釈します。h=0であるときは、錘をフランジに接した状態で離すことですので、δは、静的撓みの2倍です。静的に荷重を作用させた状態で、付加的な変位を与えるときは、hを負の数とします。h=5cmであると、静的な撓みの21.52倍の撓みですので、σ=2152kgf/cm2です。この問題を、錘Wの衝突とすると、フランジに接触するときの速度は、h=5cmを落下するとして
   
錘の落下衝突によって、錘はリバウンドでh’に撥ね上がるとします。ポテンシャルエネルギーの差、Δ=W(h−h’)が鋼棒システムに伝わります。このシステム全体が完全な弾性体であるとして、このエネルギーが鋼棒の弾性エネルギーに使われたとします。鋼棒は、静力学的には応力度がありませんが、縦振動で伸縮すれば応力度が発生しますので、その弾性エネルギーを求めることができます。そのときの最大応力度をσ’と置くと、
   
リバウンド量をh’=0.5hと仮定すると、応力度は次式で得られます。
   
鋼棒は、その長さを伝わる縦波(音としての振動)があります(10.2.3節参照)。その速度は5120m/secです。この速度で弾性波が鋼棒を1往復する周期で鋼棒が振動すると、周波数は512Hzです。この動的な応力度σ’は、鋼棒の上端Aで逃げてしまいますので、振動が減衰します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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