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10. 衝撃・振動・疲労

10.2 振動と波動


10.2.3 細長い部材の縦波は波動の速度が定量的に計算できる

 弾性体を伝わる横波は、境界条件などで一意には決まりませんが、縦波(音)の伝播速度は次の式で求まります。をヤング率(重力加速度9.8を掛けたニュートン単位/断面積)、ρを密度として、
   
鋼材では、E=2.1×106kgf/cm2、ρ=7850kg/m3を代入すると、v=5120m/secです。コンクリートでは、ヤング率を鋼の1/7、密度を2400kg/m3として、v=3500m/secとなります。この速度はかなり速いので、動的な力伝達作用を考える必要がありません。しかし、例えば、鋼柱を杭打ちハンマーで叩くと、或る応力度振幅の縦波が柱を伝わります。この応力度振幅は、材料の降伏点以下の弾性範囲内でないと伝わらないはずです。そうであると、ハンマーが直接当たる個所で、衝突によって生じる柱側の初速度が、上記の波動速度を超えるような場合、その差に相当する運動エネルギーは、衝突個所の塑性変形に使われます。柱を伝わる弾性波は、柱の反対側に達すると、そこでの境界条件によって、反対側に伝わるか、部分的にリバウンドとして叩いた側に戻り、何回かの往復をすることがあります。長い柱の両端が剛に拘束されていると、座屈変形を起こすことがあります。釘打ちのとき、強く叩き過ぎると曲がるのがそうです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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