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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.3 梁の塑性設計


9.3.6 連鎖的な破壊を止める方法

 自然の石材を使った簡単な桁橋は、特に珍しい構造ではありません。亀裂が見つかる場合もありますが、人が渡る程度の使い方であれば、折れそうな兆候を感覚的に察知できます。試験機を使って注意深く曲げ試験をすれば、折損する寸前で試験を中止することができます。この章の始めに説明したように、試験機の原理が、変位を加える方法を採用しているためです。ゆっくりと変位を増加させていくと、曲げモーメントが増加していきます。梁に亀裂が僅かに発生したとき、荷重が下がるの見逃さなければ、実験を停止して、亀裂の進行をそこで止めることができます。ただし、いつも成功する保証はできません。もし、錘を載せていく試験方法を取るか、変位させる速度を速くすると、亀裂の進行を止める間もなく、折損が起こります。鉄筋コンクリート梁の曲げ試験をすると、コンクリートに亀裂が入った時点から鉄筋が引張応力度を肩代わりして、亀裂が高さ(深さ)方向に進行するのを抑えます。鉄筋コンクリート梁の弾性設計に使う力学モデルは、引張側になるコンクリートの寄与を無視し、引張応力はすべて鉄筋で持たせます。圧縮側のコンクリートは、応力度と歪みが比例すると仮定します。これは、応力度と歪みのグラフが、圧縮から引張に変る個所で折れ線になりますので、数学的非線形であると言います。線形理論と言う用語は、本来、数学的な意味を言いますので、力学的な意味の弾性理論と同義ではありません。曲げモーメントを増加させていくと、図9.6の圧縮側のように応力分布が変り、鉄筋も降服点以上には応力が伸びません。鉄筋コンクリート梁の最大抵抗モーメントは、このモデルを採用します。これについての詳しい計算法の説明は、下記のURLを参照して下さい。
「易しくないコンクリート工学;第5章矩形断面部材の計算法」
https://www.e-bridge.jp/eb/tcontents/yasasikunai-concrete/top.html
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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