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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.3 梁の塑性設計


9.3.1 橋梁と建築物とでは考え方が異なる

 橋梁構造は、長大橋梁を別として、実用される中小の橋梁では、応力が最大になる条件に、自動車荷重のような活荷重が大きな比率を持ちます。実際に通行する活荷重の大きさは、道路橋では予測ができません。トラックなどの重量車には、自重と積載重量の最大に規則がありますが、それに違反する過大な重量車も通ることもあるのが現実です。つまり、応力が設計応力を超える確率は、かなり高く、その分を考えて安全率を高くした弾性設計法が採用されます。一方、一般的な建築構造の場合、設計荷重は自重が主です。設計応力の計算に使う危険の見積もりは、日本では地震荷重です。この荷重は、自動車荷重とは異なって、確実に作用する現実的な力ではありませんので、特に考えなくても済ますことができます。設計計算で耐震計算をするとしても、気休め的に処理することも多くなります。このこともあって、自重を主に考えた場合の設計安全率は、橋梁構造物に較べて大きくしません。大地震が襲来したときの安全確保は、部分的な破壊は許しても、人命に関わるような全体の崩壊を抑える対策を考えます。ここに塑性設計法が応用されます。構造物の耐力の方で抵抗できないほどの大地震が襲来したら、材料が塑性変形をして部分的な破壊が起きることを許し、全体構造システムの崩壊に繋がらないようにする考え方です。地震対策を、力に置き換えて計算する方法を震度法と言い、これには弾性設計法が応用されます。超高層ビルを柔構造にして地震力を逃がす考え方は、変形も弾性範囲になるように抑えますので、弾性設計法と言えます。どの設計法がよいかは一概に断定できません。しかし、すべての構造物は地盤の上に建造されますので、耐震対策は上部構造だけで扱う課題ではありません。橋梁の場合、地盤との接続個所である橋台と橋脚の、地震時の変形や変位を抑える対策が重要視されます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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