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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.2 破壊の力学モデル


9.2.3 材料の破壊は二つに分かれること

 俗に、物が壊れる破断は、繋がっていた形(連続体)が二つに分かれることを指します。引張材は、破断で明瞭に二つに分かれます。石材やコンクリートのような脆性材料の梁を曲げ試験をすれば、二つに折れます。このときの強度は、主に材料の引張強さの方で決まります。コンクリートは、圧縮応力度の場になるように使えば、引張強さよりも大きな強さを示します。さらに、コンクリートの圧縮柱の回りを囲うようにすると、そうでない場合よりも大きな圧縮耐力を示します。これを支圧(bearing)と言います。一方、金属材料を曲げても、折れで破断するのは鋳物のような脆性の大きな材料であって、普通鋼材では曲がるだけで折損しません。これは塑性的な性質があるため、連続性が保たれためです。脆性材料の破壊は、主に剪断変形で起こります。この剪断面は引張強さを持ちませんので、この面に圧縮力または付着力が作用しなければ、この面で材料が二つに分かれます。コンクリートの円柱試験体の圧縮試験をするとき、荷重が僅かに下がった時点で作業を止めると、幾らか引張強度が残っている個所が円柱全体の形を保ってくれます。このようにすると、材料試験の環境を試験片の破片などで汚さなくて済ますことができます。これは、安全な実験作業をするときの、いわばノウハウ的な技能ですので、作業マニュアルなどに載ることはあっても、参考書に書かれることはありません。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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