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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.2 破壊の力学モデル


9.2.2 寸法効果があることの説明が難しい

 部材の応力度を数学的に解析をするときのモデルは、材料寸法が微分的なレベルまで均質な連続体であるとします。実際の材料は、ミクロに見れば、均質な構成ではありません。コンクリートで言えば、応力度の計算に使う部材断面の平均寸法は、砂利の寸法よりも大きくみなければなりません。鋼材は、コンクリートに較べれば相対的に均質な材料ですが、それも、顕微鏡で見れば、結晶集合レベルで不均質さが見られます。数学を応用して精密な解析をする目的は、微小な寸法間隔の注目点間でも応力度の分布を知りたいことにあるのですが、実際の材料内部で均質な仮定が常に成立しているとは言えません。材料の全体寸法が相似的に大きくなれば、均質さの仮定に近づくと考えることができます。しかし、コンクリートの材料試験の結果は、寸法が大きくなると強度が相対的に低くなる相関が観察されます。これを寸法効果(size effect)と言います。鋼材では、同じ材質でも薄板に圧延した材料の方が相対的に強さが大きく得られます。鋼橋の製作では、許容応力度に適合させる鋼材を選択するとき、厚板の方に品質が上位の鋼材を当てます。この寸法効果を合理的に説明する理屈はまだ無いようです。一つの仮説は、「破壊は、材料内部でミクロの破壊の繋がりで大きく成長することによる結果である」とします。ミクロの破壊の種(たね)は、部材表面ならば、切り掛けのような個所であって、局部応力が大きく、亀裂が出易い個所です。種の個数は、材料内部に統計的に見て、均質に分布していると仮定します。そうであると、体積の大きい部材は、タネの個数が相対的に多くなりますので早目に破壊が進む、と仮定できます。また、寸法が小さな試験体では、強度のバラつきが大きくなることも説明できます。疲労によって材料の強度が下がっていく場合の説明も、部材内部に欠陥が蓄積していく現象と考えることができます。疲労が進んだ材料は、外見では欠陥が見られませんが、金属材料などは溶かして再生しなければ元の性質に戻りません。機械部品などは、一定の使用時間が経過すれば、未だ使用できる未練があっても、安全を考えて、新品と交換する規則を設けることもします。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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