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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.2 破壊の力学モデル


9.2.1 降服点と最大強度との使い分け

 定性的に言う物の強さは、同じ材料を使っても、形状・寸法・荷重の種類と載荷方法などによって破壊の状態も強さの大きさも変ります。或る条件を決めて、強さの度合いを定量的に決めるとき、材料試験の、どの段階での強さか、の言葉を補います。また、構造物の設計をするとき、強度の基準位置を降伏点に置くか、破断強度に置くかなどを問題にします。弾性設計と言う時は降服点を考え、極限設計というときは最大強度を考えます。コンクリートのような脆性材料は、圧縮強さの方を実用的に使います。これも、試験方法によって強さの現れ方が変ります。日本では、直径15cm、高さ30cmの円柱供試体の圧縮実験で得られた値を基準の圧縮強度とします。正確に言いたいときは、シリンダ強度と断ります。実際の破壊の様子は、剪断破壊を示しています。シリンダ強度は、試験体の寸法が相似でも、大小違いがあると、相対的に小寸法の試験体の強度が高く得られます。また、ヨーロッパ諸国では立方体の試験体を使いますが、この強度もシリンダ強度よりも高く得られます。これらの実験強度を元にして、コンクリート構造物の設計に利用するとき、理想化した破壊モデルを考えて、圧縮・支圧・引張・剪断・付着などの許容応力度に分けて提案します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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