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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.1 材料試験の計画と結果の見方


9.1.10 塑性・脆性・粘性

 材料が破壊されるとき、引張破断は連続性が断たれる場合です。繋がったままで形が変る場合もあります。前者の破壊の極限は、岩石のような連続体が割れて行く過程がそうです。これをぜいせい脆性:brittle)破壊と言います。対照的に、破断が起きないで、大きな変形に対応できる性質をそせい塑性:plastic)と言います。粘土のような性質です。金属材料では、延性と展性の用語を使います。石材やガラスなどは、脆性材料です。引張応力の場で降服点を超えると、変形が追い付かなくて破断または辷りが起きます。この材料は、引張強さが圧縮強さに較べて低い材料であって、力学的には、引張強さが剪断強さとほぼ同じ大きさを示します。辷りは、体積変化がなくても、相対的にズレの大きな変形を起こします。地震のように、地下深くで、体積変形の自由度が無い個所でも、部分的に起こる変形です。一方、塑性材料は、降服点を超えると、ミクロの分子または原子レベルで材料内部に辷りが起きて、変形に対応します。金属材料では、これを転位(dislocation)と言います。転位が起きても、原子または分子間の結合力が働きますので、引張強さが保存されます。乾いた砂は、全体をマクロに見れば引張強さの無い連続体です。粉体または粒体と分類することがあります。流体のような性質もありますが、或る角度(安息角)の斜面を持たせて積み上げることができて、その上に重量物を載せられる静力学的な強さを持ちます。これは、摩擦を持った斜面と似た性質ですので、内部摩擦があると言います。摩擦と剪断とは、静力学的には似たところがあって、力を伝える作用を助けます。砂は、水気があると、海水浴の海岸で砂山を作ってトンネルを掘ることができるような、見掛けの引張強さを示します。これは、粘着力または付着力が効くようになったためです。これが粘性です。土材料は、粘性を持った粉体としてモデル化します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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