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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.1 材料試験の計画と結果の見方


9.1.9 接着剤の強度は剪断強度で言う

 接着剤と言えば、エポキシなどの合成樹脂系の材料をまず考えます。コンクリートは、セメントペーストを接着剤として砂利や砂を結合して連続体にした材料です。セメントペーストに代えて融点の高いアスファルトを使うときはアスファルトコンクリート、合成樹脂を使うときはプラスチックコンクリートのように言います。接着剤が固まるメカニズムが化学反応であるものは、この過程で熱がでますので、熱硬化性接着剤と言います。アスファルトは熱を加えると液状になることから、熱可塑塑性接着剤です。プラモデルに使う合成樹脂がそうです。価格の高い接着剤の量を節約するため、埋め物に使う材料を骨材(aggregate)と言い、コンクリートは、砂利や砂を使います。塗装に使う場合は、顔料が骨材です。強度に期待する使い方をする接着剤を、構造接着剤と言います。粘着テープや、紙の接着につかう糊は、強度を持たせると硬くなり過ぎて、使い勝手が悪くなります。構造接着剤の強度試験は、二枚の板を重ねるように接着剤で繋ぎ、その面に平行な剪断応力での強度を測定します。引張強度の試験ではありません。接着剤単独では剪断強度があっても、接着させたい対象との相性が悪いことがあって、引張強度には期待しないように使うのが原則です。剪断応力の場にするとき、対象物の表面を粗く加工しておいて、機械的な引っ掛かり、つまり、摩擦を利かせる、などの実践的な方法が採られます。鉄筋コンクリートに使う異形鉄筋は、この効果を考えた材料です。コンクリートの骨材だけの集合は、内部摩擦を持った構造材料ですので、セメントペーストで隙間を埋めることで、実質的な剪断強度の大きな材料になります。ただし、理想状態で引っ張る使い方に対しては、強度の向上には繋がりません。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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