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9. 材料の破壊と部材の破壊

9.1 材料試験の計画と結果の見方


9.1.7 引張試験が示す材料の性質

 材料の強さとは、基本的に引張強さです。砂や砂利は引張強さが有りませんので、構造材料として使うことができないと思い込むのは誤解です。圧縮応力状態で使います。細長い試験片を作って引張強さを試験したいとき、試験片を咥える端の部分の構造に工夫が必要です。金属材料は、この端で、横から試験片を締め付け、摩擦力を利かして引張力を伝えるのが普通です。脆性材料は、この端部分で局部応力度が大きくなる原因で破壊し、本体の強度試験にならないことが起こります。試験片の形状を、中央でくびれた砂時計のように製作して、引っ掛かりで持たせるアイディアは、コンクリートやセメントモルタルで試みられたこともありました。しかし、試験片の製作に手間が掛かりますので、実用試験法になりませんでした。材料を引張応力状態にすると、全体の体積は減少します。材料強度が或る限界に達すると、体積減少が止まり、強度はそのままで体積減少のない変形状態に移ります。これが塑性変形です。通常は、部材内部でミクロの辷り変形が起きています。脆性材料は、辷り変形能が低い材料です。強度が最大になった時点から、僅かに変位が増加したところで破断が起きます。後先になりますが、脆性と塑性の定義は、後の9.1.10項で説明します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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