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8. 剪断応力度に関する特殊な問題

8.2 幅広のフランジ有効幅


8.2.1 座屈を考える薄板の組み合わせ部材

 マクロに部材を見て、薄板を組みあわせた断面を持つ梁や柱は多く実用されています。鋼のカタログ化された形鋼が代表的です。鋼のプレートガーダー(鈑桁)もそうです。鉄筋コンクリート構造のT桁や鋼コンクリートの合成桁は、主桁から張り出した床版の或る幅の範囲を薄板のフランジと見なして、主桁と一体化した一つの部材として計算することが実用されています。前節の図8.2に図示したH断面の桁は、支間に対して相対的にウエブの高さが高く、またフランジ幅も広く描いてあります。フランジ幅が広いと、張り出し長さの大きい薄板はリボンで作成した波型の縁取り(フリル)のような性質が現れ、幾何学的な形状を保たせることができません。曲げ部材の圧縮側になる場合、この変形は板の座屈と繋がります。したがって、実用的には板厚に対して張り出し幅を制限します。これが有効幅(effective width)を提案する一つの根拠です。鋼の薄板では、理論的な根拠は、板の圧縮座屈を考えなくても済むようにすることです。その提案は、片側に張り出す幅を、有効断面に組み入れる範囲として板厚の12〜15倍が設計上の常識です。山形鋼、I形鋼などの断面形状は、張り出し部の幅と板厚の比がそのように決められています。H形鋼のウエブでは、板の両端が変形を抑える作用をしますので、板厚の40〜60倍の範囲でウエブ高さが決められています。これが有効幅の一つの実用的な解決です。鋼の形鋼のカタログを見るとき、板厚・板幅比に注目して下さい(表4.1、表4.2参照)。この板幅制限は、座屈変形を抑えることを目的としたものですので、補剛材の配置間隔を決める場合に応用されます。なお、引張り応力場にある板は、座屈を考える必要がありませんが、板全体の曲げ変形を抑えるため、上の制限幅の1.5〜2倍にします。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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