目次ページ  前ページ 次ページ

8. 剪断応力度に関する特殊な問題

8.1 曲げを受ける梁の剪断応力度によるソリ


8.1.1 部材断面の凹凸変形をソリと言う

 細長い柱や梁の変形を言うときは、主に、長手方向の曲げ変形を指します。部材としての剪断変形の大きさは、実用的には無視できます。しかし、建築物の骨組み構造で構成された全体をマクロに見て高さ方向の柱として扱うとき、地震時の変形で見るように、剪断変形の方が観察されます。この変形を抑える目的の部材が筋交いや耐震壁です。トラス橋の場合は、筋交い相当の斜材も主構造として設計されます。トラス橋の変形を計算するとき、全体をマクロに見て梁に換算することも行われますが、剪断変形の寄与は無視できます。ただし、これらの議論は、構造力学の課題に属します。材料力学では、均質な材料の弾性体の梁が、剪断力を受ける場にあるときの応力度の性質を解析することを、主な課題とします。部材の長手方向の、応力度の分布を知る解析が第一義です。この説明と例題は、第5章にまとめました。設計上の課題として、剪断応力度の現れ方を解析することが第二義的に重要です。この説明と例題が第7章でした。ここまでの解析では、梁の変形を扱うとき、断面の平面保時の仮定(6.1.4項参照)を採用していました。しかし、剪断応力度を考えると、平面保持の仮定が成立しません。その影響をどのように扱うかをこの章で説明します。部材断面の剪断応力度の分布が一様でないと、理論上、最初に平面であった断面が、紙製の皿(ソーサ)のように変形します(図8.1)。この変形を平均化した平面を考えて、その面からの凹凸を反り(ソリ:warping)と言います。反りは、剪断応力度による剪断歪みの累積で起こり、さらに条件次第で局部的な応力度分布を起こします。これを剪断遅れ(shear lag)と言います。剪断応力度の分布を理論的に扱う場合、矩形断面を扱うのが基本です。その応用が、薄い矩形断面の集合、つまり、薄板で構成した断面形状での解析です。剪断遅れは、前の第7章で紹介した剪断流の解析を踏まえ、剪断歪みの累積を計算して求めます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

前ページ 次ページ