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7. 梁に作用する剪断応力度

7.3 剪断中心の計算


7.3.3 剪断中心の計算例題

 幅も厚みもあり一般的な形状の梁断面部材では、剪断応力度の分布がどうなっているかの詳細は、よくわかりません。矩形断面は、理論モデルを考えることができますが、例えば、円断面では剪断応力度がどのように分布するかは、材料力学の学問的研究課題です。構造物の部材設計では、剪断中心を特に計算しなくても断面の提案ができます。したがって、剪断中心は、材料学の知識として必要であっても、具体的な数値計算をする機会は多くありません。剪断中心の計算は、剪断応力度の向きを、断面図形を見て、確認しながら進めます。案外手間のかかる手計算を必要としますので、汎用のプログラミング言語を使うソフトウエアの開発には向きませんでした。以下に例示した計算例は、電卓を使って計算したものです。この計算手順は、表計算の形にまとめますので、例えばMS-EXCELのような表計算ソフトが便利に利用できるようになりました。
 この節では、教育目的を兼ねて、溝形鋼をモデル化した、片仮名のコの字形をして薄板断面での数値計算例を示します。一方、ギリシャ文字のπに形をした断面図形は、橋梁では2主桁橋の断面形として見られます。πの文字で、左右の耳を切って90度回転したときの計算は、図7.10を横向きに剪断力が作用する場合です。こちらも橋中心から偏心して荷重が載ると捩じれますが、普通は、構造力学的に主桁に注目した捩じれを扱い、捩じれ中心のことを考えません。剪断中心は、垂直・水平の二方向で求めます。例題計算は、意図的に上下・左右に非対称な断面を扱うことにしました。計算条件と計算結果は、次項にまとめました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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