細い円断面の針金を、円柱に螺旋を描くように巻きつける変形を考えて下さい。身近にある物として、例えば、電気掃除機の電源コードのような、やや腰の強い、あまり捩じれが出ない線材を実験に使うことができます。コードの端を持って捩じると、コードを真っ直ぐにしてことができなくて、螺旋状に曲がりがます。この変形は、コードの曲げの向きが長さ方向に少しずつ曲がることで起こり、コード自体は捩じれがありません。コードの長さ方向に平行な稜線を描いておいて、このコードを円柱に螺旋状に巻き付けていくと、円柱に接する稜線が順にずれていきます。円柱の軸線方向からコードを見れば、断面は捩じれていきますが、これは幾何学的に起きる捩じれであって、コード自体は部材としては捩じれません。丸い断面のコードでは気が付かないのですが、円形以外の断面をしたコード、または細い四角な断面の部材を螺旋状に巻き付けるとき、一つの面を巻きつける側の円柱側面に接するようにするには、強制的に捩じり込むようにしなければなりません。薄い紙テープを円柱に螺旋状に張り付けるのは簡単にできます。この場合、紙テープを軸方向に対して斜めに曲げを入れます。この曲げは、紙テープに長手方向に直角な曲げと同時に長手方向を軸とした捩じれを加えることになっています。螺旋形を描くような、梁の立体的な変形を扱うのは、構造力学の方の課題であって、この論説で扱う材料力学の課題とは別問題です。
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