目次ページ  前ページ 次ページ

7. 梁に作用する剪断応力度

7.3 剪断中心の計算


7.3.1 部材としての捩じれと構造物としての捩じれ

 構造物の部材として最もクセのない形状は円断面です。これをモデル化するときは、便宜上、幅も厚みもない線状の部材として扱います。長さは、構造物としての属性です。部材としての弾性的性質を言うときは、微分的に考えた単位長さで表したときの力と変形の関係を言います。この単位長さの部材では、長さの両端での応力は、大きさが同じで向きが反対です。或る長さの直線または曲線を描く柱や梁、長さ方向に最初から捩じれている場合などは、幾何学的な属性です。長さを考えた両端で、力と変形の関係が単純になりません。丸い断面の部材は、構造に構成するときに不便なことが多いので、実用部材は、矩形の組み合わせの断面が多く採用されます。そうすると、これは、ミクロに見れば、複雑な構造物になりますので、特殊な力と変形も扱う必要が起こります。これを単純化する考え方の一つが、前の第6章、6.1.4項に挙げた平面保持の仮定です。実は、剪断応力度を考えると、平面保持は成り立たないのです。もう一つの面倒な問題が捩じれです。梁に作用させる外力の作用線が梁の重心線を通るようにしても、梁に捩じれが起きる断面構成の部材があります。この部材では、断面の重心から外れた個所に捩じれ中心があって、外力の作用線が捩じれ中心を通るようにすると、部材に捩じれ変形が出ません。この節では、薄板で構成した断面形の捩じれ中心を説明します。この中心は、梁に外力が作用したときの、部材断面の剪断応力度の合力が通る中心として求めますので、材料力学では剪断中心(shear center)の方を用語とします。捩じれ中心の用語は、構造力学的に捩じりの問題を扱うときに使います。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

前ページ 次ページ