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7. 梁に作用する剪断応力度

7.1 剪断応力度分布のメカニズム


7.1.3 剪断流の考え方を理解する

図7.2 計算例題に使った断面
 梁の断面形状が、前々項の図7.1のように幅と厚みがある場合、設計実務で剪断応力度の分布を近似的に考えるときは、腹部断面全体に剪断応力度が等分布していると仮定します。この理由は、剪断応力度の大きさが、局部的に特に大きくなることがないからです。しかし、鋼の薄板を組み合わせて断面形を構成するときは、剪断応力度の大きさと向きとについて、水路を流れる水流と似た性質があります。これを剪断流(shear flow)と言います(ただし、この用語は、流体力学でも使います)。図7.2に示す三種類の断面形状について、剪断応力度の分布の計算を、説明の例題として取り上げます。この三断面は、垂直方向の剪断力を受けるとし、腹板(ウエブ)の寸法を同じにしてあります。断面(a)は、フランジがありませんが、これは厚みのある矩形断面のモデルです。断面(b)と(c)はフランジが付きますが、ウエブの片側と両側に水平に付いています。フランジ部分の剪断応力度の合力は水平方向です。また、ウエブとの接続個所で、剪断流の合流(または分岐)が起こります。計算手順を分かり易くするため、表の形にまとめました。

図7.2 計算例題に使った断面
解説:
 剪断応力度は、板の自由縁で0です。剪断流の大きさは、板幅方向に変化します。フランジ部分は直線分布、ウエブは放物線です。剪断応力度の最大は中立軸の位置で起こります。ウエブに剪断力が等分布すると仮定すると、τ=875kgf/cm2です。ウエブの剪断応力度の合力は、ウエブを流れる全流量であって、応力としての剪断力と釣り合います。なお、H形は、溝形鋼を背中合わせに貼り合わせて構成した対称断面と考えることができます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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