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6. 部材断面内の不静定問題

6.4 二次元弾性体の解析問題


6.4.1 不静定の力学問題として捉える

 理論的に扱う弾性体は、均質な連続体を仮定し、微分レベルでの力の釣合と変形条件を考えて解析します。部材内部の応力度と歪みの関係を求めたいとしても、実用になる厳密解が数学的に得られる条件は限られています。一定断面の柱や梁の応力度と歪みを解析するときは、長手方向に一次元の座標系を考えて、断面の平面保持の仮定を使った、最も単純化した力学モデルで扱います。しかし、二次元的な形状を扱う二次元弾性体となると、理論的な扱いが難しくなります。例えば矩形断面の単純桁は、桁の厚みがありますので、支間が短いと、曲げ部材としての仮定は現実的ではなくなります。コンピュータが便利に利用できるようになって、任意の条件のときであっても、定性的に近似解が必要であるときは、有限要素法(FEM: Finite Element Method)を使うことができるようになりました。これは、連続体である弾性体を骨組み構造に置き換えて扱いますが、非常に不静定次数が大きい構造系になります。このことを意味するように、この章の標題に不静定問題と書きました。連続体として微分方程式を解析に直接使う場面は、多くないと言えるでしょう。部材の設計法を吟味するとき、二次元弾性体の解析が必要となる代表的な場面は、支圧(bearing)です。これは、弾性体の表面(境界)で外力が狭い範囲で作用する個所です。物理的に外力を考えるときは、その全体をまとめて矢印を描き、ベクトルの扱いをします。実際に力が作用するのは、錐の先のような尖った物が当たるのではなく、面に分布する力です。或る狭い個所に作用するとき、局部的に大きな応力度と歪みが出ますので、その実態を見積る必要があります。幾つかの問題を以下の項で紹介します。ただし、お話しだけで済ませ、具体的な数式などは省きました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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