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6. 部材断面内の不静定問題

6.3 鉄筋コンクリート梁の計算


演習例題 6.1(続3)

(5) 偏心軸力を受ける柱としての計算
 この計算をするときは、軸力の作用位置が大体決まっていることが必要条件です。予備的な知識として、核の位置がどこにあるかを、前もって当たっておきます。実は、(1)で計算した核は、断面の高さをhで考えましたので、下縁でコンクリートの応力度が0になっていても、鉄筋に幾らかの圧縮応力度が作用します。鉄筋が入っている個所でコンクリートの応力度が0になる条件ならば、核の位置は上縁からdの1/3である13.3cm下になります。この位置から上に軸力が作用すると、鉄筋に引張応力度が生じます。つまり、図6.6ではe<13.3cmの条件での解を計算します。

表6.4 軸力Pとの釣合条件

軸方向力分

断面

寸法

断面積

   

n×A

bxσ/2

コンクリート

50

50x

−nAσ(d−x)/x

鉄筋

6-φ22

342

     

釣合条件:   Σ=0

(P/σ)=25x−342(40−x)/x


表6.5 モーメント分Peとの釣合条件

モーメント分

断面

寸法

断面積

鉄筋位置からの縦距

   

n×A

 

(bx/2)σ(d−x/3)

コンクリート

50

50x

d−x/3

0

鉄筋

6-φ22

342

0

(d−e)

     

d−e

釣合条件  Σ=0

(P/σ)(40−e)=1000x−(50/6)x


軸方向力と曲げモーメントの条件より(P/σ)を消去してxの3次式を求めます。
    (50/6)x+{25(40−e)−1000}x+342(40−e)x−13680(40−e)=0
計算例題として、ここでは軸力Pの作用位置eを0とします。
    8.3333x+13680x−547200=0

xの三次式を代数的に解く方法にはカルダノの式があります。理論式としての価値はありますが、数値計算手順が面倒です。ここでは、典型的な計算技術であるニュートン・ラプソン法による反復法で求めます(説明は省きます)。手計算に使うと、計算手間が格段に少なくなります。
    F=x+1642x−65664=0、  F’=3x2+1642、Δx=−F/F’
    初期値x=20で始めます。
一回目:F=8000+32840−65664=−24824、  F’=1200+1642=2842、x=20+8.5=28.5
二回目:F=23149+46797−65664=4282、  F’=2437+1642=4079、x=28.5−1.05=27.45
三回目:F=20684+45073−65664=93、  F’=2261+1642=3903、x=27.45−0.02=27.43
……

表6.4の軸力分の釣合式より
    (P/σ)=25x−342(40−x)/x=685.75−148.48=537.27
σ=P/537.3
σ=nσ(d−x)/x=P/78.2

計算例として、P=30 tfの軸力を受ける場合の解:σ=56 kgf/cm2、σ=384 kgf/cm2

(6) 他の断面形状に応用するとき
 単鉄筋矩形梁は、最も基本的な鉄筋コンクリート断面ですので、その代数計算式は多くの参考書で見ることができます。少し複雑になると、代数式の提案がないか、複雑になりますので、ここで紹介したように表計算で作業をする方が勝ります。コンクリート梁に関する具体的な計算式の説明は、下記のURLを参照して下さい。
「易しくないコンクリート工学」5. 矩形断面部材の計算法
https://www.e-bridge.jp/eb/tcontents/yasasikunai-concrete/top.html
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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