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6. 部材断面内の不静定問題

6.3 鉄筋コンクリート梁の計算


演習例題 6.1

図6.6 例題計算に使う矩形断面と記号

(1) 記号の約束
 鉄筋コンクリート部材の計算では、多くの種類の英字記号が使われます。使い方に慣用が定まっているものは、特に説明がないこともあります。コンクリート関係の参考書は、記号の意味と、用語の定義をまとめたページを設けることが見られます。参考書ごとに、記号、座標系、また正負の約束などに違いがありますので、提案されている式を使うときに注意が必要です。ここでは、図6.6に使われる記号について説明します。慣用がありますが、念のため常識の確認も兼ねて解説します。
・特に断らなければ、記号は正の数を表します。計算書などの技術文書に使うとき、数式の計算結果が負の数になるときは、説明を補って正の数で書くのが丁寧です。
・数値は、できるだけ整数を使います。桁数が多くなる数値は、単位系を変えて使うことがあります。
・寸法数値は負の数を使いません。結果的に図6.6の高さ方向の座標は、原点を矩形断面の上縁において、下向きに測る約束になります。
・図6.6では、外力Pの作用位置が偏る量を表す記号eの符号は、式の上では負の数で扱うことになります。これが元で、数値計算のときに混乱することがあります。
・応力(力、モーメント)、応力度も、実用は、向きを決めて正の数で扱います。したがって、コンクリートの応力度も、圧縮応力度と断って、正の数で表します。力の向きを示す矢印は、数値の正の向きを示します。
・寸法記号は英小文字を使います。記号は次の約束が慣用です;
  h: 桁高さheightの意味です。
  d: 有効高さeffective depthが元の意味です。
  x: 断面上縁から中立軸までの距離です。数学記号の未知数の意義です。
・応力度の記号は、ギリシャ文字σ、τを使うのが材料力学の習慣です。設計示方書では、アメリカでの習慣を取り込んで、fも併用されています。
・コンクリートは、圧縮応力度として使うことが標準ですので、応力度をσと書くときは正の数値で扱います。そうすると、引張応力度の検証が必要になるときに負の数値で表すことになりますので、説明を補う注意が必要です。
・鉄筋は、引張応力度になるように使うのが標準です。しかしコンクリートの圧縮応力度の場では、これも圧縮応力度になって負の数になるので、圧縮鉄筋のように言葉を補う注意が必要です。
・なお、図6.6には書いてありませんが、計算式には慣用として下の記号も使います;
  n: 鋼のヤング率/コンクリートのヤング率の比です。
  p: 鉄筋断面積の比、A/(b×d)です。hではなくdを使うことに注意します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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