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6. 部材断面内の不静定問題

6.3 鉄筋コンクリート梁の計算


6.3.2 曲げと圧縮を受ける梁として解く

 コンクリート構造物は、コンクリートにひび割れ(亀裂)が生じないように設計し施工します。亀裂の発生を抑えるために、コンクリート部材の応力度は、実用状態では引張強度の範囲内に抑える設計をします。亀裂が見られる構造物は、理由が何であれ、常識的に言えば欠陥設計か欠陥施工です。引張応力度は、主に、梁として曲げモーメントが作用するときですので、安全を確保するため、梁としての最大抵抗モーメントを見積もる必要があります。この大きさは、できれば実物での破壊試験で求めるのが理想です。しかし、応用の利く条件での実験データを元に、それを説明する力学モデルを考えて、設計計算に応用します。このモデルは、実験事実を正確に説明する科学的な態度からは幾らか妥協した、技術計算に便利な力学モデルが提案されます。鉄筋コンクリート梁の設計計算に使われるモデルは、コンクリートブロックを積み木のように重ねたモデルを想定します。コンクリートの引張強度の寄与を無視し、圧縮場のコンクリートは応力と歪みが比例するとした、圧縮と引張との弾性率が異なる非線形の弾性体であると仮定します。曲げで生じる引張応力を分担するために鉄筋を使います。それも、矩形断面の片側に寄せます。これが単鉄筋コンクリート梁の発想です。これから先は、数学的な解析法の理論と数値計算技術の問題です。コンクリートの弾性的な性質が数学的には非線形ですので、一意の代数式で断面計算ができません。このことが、鉄筋コンクリートの計算を面倒にしている理由の一つです。この節は、初心者教育のことを考えて、非線形弾性体の計算が複雑になって行く例題を解説します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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