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5. 弾性的性質の数学モデル

5.4 柱の座屈の現れ方


5.4.6 設計実用式の工夫

 圧縮力を受ける部材の断面形状を設計するときは、予備的に柱の圧縮実験の結果を参照して、使い易い許容圧縮応力度の実用式を提案したいところです。これについては、従来から多くの議論があります。基本的な態度は、平均的な実験値の曲線を、或る安全率で割った形で提案します。この安全率の選び方が第一の問題です。長柱が座屈で曲げ破壊を起こすときは、オイラーの座屈で説明できますので、これを弾性座屈と言います。長柱の曲げ破壊は、その柱を含む全体構造系の崩壊に繋がることが多いので、部材としての設計安全率を高くします。土木構造物の場合、崩壊を考える場合には安全率を3とするのが一つの常識です。一方、充分に短い長さの柱は、曲げ変形は僅かであって、断面全体が降服点に達したところが耐荷力の限度です。この場合には、未だ柱としての形を保っていますので、安全率を約2まで下げています。そうすると、細長比が0から限界細長比に間で、安全率を2から3に滑らかに変化させる必要があります。この範囲を塑性座屈と言います。最も単純な実用式は、古い示方書の規定に見られるように(L/r)をパラメータとした式です。SS41の場合は下の形です。この式は示方書から引用したのではなく、上で説明した論理から導いた参考値です。
   
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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