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5. 弾性的性質の数学モデル

5.4 柱の座屈の現れ方


5.4.5 座屈実験の結果と解釈

 圧縮力を受ける鋼部材の断面形状を設計する参考のため、多くの圧縮実験の研究があります。実験データを整理するとき、柱が耐荷力の限界に達したときの断面の平均応力度を、細長比を横軸にしてプロットします。そのときの参考に、オイラーの座屈応力度の式を使います。降服点は材料の種別で異なりますので、降服点の高さを合わせ、そのときの限界細長比も合わせるよう座標変換してグラフ化した例を図5.5に示します。理論的な予測は、長柱領域でオイラー曲線に乗り、短柱領域では降服点を通る水平線に乗るのですが、実際の測定値は角が取れた曲線になり、全体は平均すれば理論値を下回ります。前項で説明したように、降服点の1/2で座屈する細長比の位置は、限界細長比の1.4倍であって、この位置から右では、オイラー曲線と実験値とが大体一致します。なお、実用される部材では、長さが長いと自重による曲げも大きくなることと、振動し易くなりますので、最大細長比の制限があります。主要部材で120、二次部材(横構など)では150です。座屈実験の場合もこれを考えて計画します。設計示方書では引張材でも最大細長比の制限があります(主要部材で200、二次部材で240です)。
図5.5 柱の座屈実験結果のデータ集合例(青木徹彦)
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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