目次ページ  前ページ 次ページ

5. 弾性的性質の数学モデル

5.4 柱の座屈の現れ方


5.4.4 短柱の座屈の現れ方

 圧縮柱の理論上の耐力は、全断面の応力度分布が降服点になったときとします。実際に圧縮柱として設計したい部材は、圧縮力が断面の重心を通るように工夫した構造に製作します。理論に合わせたいときは、柱の両端にピン構造を採用します。そうしないことが多いので、圧縮柱の中の応力は、偏心軸力によって曲げモーメントも作用します。そうすると、断面内の応力度分布が一様になりません。一つの理想として、断面内のどこにも引張応力度が出ない状態を考えます。応力度が材料の降服点を超えると塑性的な性質が現れます。式5.2で、応力度が材料の降服点になるときの細長比(L/r)を、一つの限界細長比を与えます。この(L/r)より大きいとき、工学的に長柱、小さいときを短柱と言います。この区別は、材料強度によって変ります。例えば、構造用鋼材SS400(旧基準のSS41)では、降服点が約2400kg/cm2程度ですので、限界細長比(L/r) は93です。軸力の偏心量の実際は分かりません。仮に断面の端で圧縮応力度が0であれば、反対側の圧縮応力度は断面全体の平均応力度の約2倍になり、降服点を超える部分が出ると、見掛け上の降服点応力度が1/2に下がります。このときの細長比は131です。因みに、鉄筋コンクリート柱の場合、限界最長比は約35が使われています。実用的な数値としては、矩形断面のコンクリート柱では、高さと幅の比で10以下が短柱です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

前ページ 次ページ