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5. 弾性的性質の数学モデル

5.3 線形弾性体として扱う柱と梁


5.3.1 三次元的に考えるときの問題

 細長い部材の力と変形を三次元的に扱うときであっても、理想としては6成分の応力と変形が独立に計算できるのが最善です。次善の扱いが二次元的な面内の力と変形とに注目して、柱と梁に使うことで済ますようにします。しかし、一般的に三次元的に考えるときは、力と変形の性質がどのような問題があるかの知識も必要ですので、最初に簡単な説明をしておきます。これは、第4章式(4.1)に紹介した、変位のマトリックスについて、その非対角線成分の説明です。

(1)柱に軸力が作用すると曲がる:ベッティの相反作用の法則(reciprocal theorem、F.Betti, 1823-1892)から、逆に、曲げモーメントが作用すると軸方向の変形が生じます。これは、式(4.1)の対角線要素について、対称な位置にある成分が等しくなることの原理です。部材断面の重心に軸力を作用させるように部材側の局所座標系を変換することで、このマトリックス成分を0にできます。なお、以下の説明では、相反作用の対になる方の力と変形の説明は省きます。

(2)一平面内で曲げモーメントを作用させても、面外にも曲げが起きる:これは、部材断面の二方向の断面二次モーメントが異なり、主軸が断面計算に使った座標面と、或る角度だけ傾くときです。

図5.3 軸力が作用すると剪断変形がでる
(3)柱に軸力が作用すると剪断変形が起きる:これはトラスのような構造物をマクロに見て均質な部材にモデル化するときに考えることができます(図5.3)。トラスに組む斜材をすべて同じ向きに揃えると、この変形が出ます。トラス橋の水平構は、この変形を避けるためにダブルワーレンに組みます。

(4)柱に軸力が作用すると部材軸回りに捻じれる:上の(3)で組み上げたトラスを4面使って、斜材が螺旋形になるような立体トラスの柱に組み上げると、この変形が出ます。また、鋼材の素線を螺旋状に撚り合せて作るワイヤロープは、撚りの向きを交互に変えて何層かを重ねあわせ、全体として、この捻じれが最小になるように製作されます。

(5)剪断力が作用すると部材が捻じれる、また、部材を捩じると剪断変形を起こす:これは剪断中心または捻じれ中心が重心位置とずれるような非対称断面で起こります。この説明は、第7章で、扱います。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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