目次ページ  前ページ 次ページ

4. 三次元的に扱う柱と梁

4.2 断面図形の幾何学的定数


4.2.7 断面係数の計算

 図4.2のような二次元の応力状態で梁を使うとき、梁断面の応力度は下の式で計算します。
   
式(4.9)のを断面係数と言います。記号にZも使います。正の曲げモーメントが作用した状態では、梁断面の重心位置から上が圧縮応力度、下が引張応力度になります。応力度の絶対値が最大になるのは、重心から最も離れた位置です。図4.2では、梁の局所座標系の正の向きは、下を向いています。重心からの梁断面の上縁・下縁までの距離をyMAX,yMINの記号で表したとき、ここではyMINが負の数になります。この約束にしておくと、圧縮応力度が負の数で計算される便利さがあります。ところで、曲げモーメントは、部材の応力状態を表す一つの力学量です。部材の応力度に注目すれば、高さ方向で変化します。したがって、曲げ応力度と言う言い方を便宜的には使いますが、正確に言いたいときは曲げモーメントによる上縁または下縁の繊維応力度(fiber stress)と言います。部材断面図形が上下対称であるときの断面係数は、材料のカタログに数値が載ります。これは、非常に実用的に使うことができます。或る曲げ部材に作用する設計曲げモーメントが計算できているとして、材料の許容応力度をσで使うとするとき、所要断面係数はW=M/σ です。カタログからこの数値よりやや大きめになる断面係数の部材を探すことで、設計作業を効率的に進めることができます。ただし、カタログに記述される断面係数の添え字は、高さ方向y座標で計算するのですが、Wと表記されていることに注意します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

前ページ 次ページ