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4. 三次元的に扱う柱と梁

4.2 断面図形の幾何学的定数


4.2.1 図形の性質を代数的に表す量

 図形の性質を客観的に表現するときの情報は、幾何学的な性質を、数値またはそれを使う代数式で表すようにします。コンピュータで図形情報を表すときは、これらを属性(プロパティ:property)と言うようになりました。矩形や三角形と言うのは、図形を構成する部品としてのニックネームです。三角形と言うことで、その形を定義する情報として三頂点の座標値を含めることが必要であることが理解されます。しかし、言葉としては形容詞や副詞を使う感覚で理解させたい情報は、定量化ができないと扱うことができません。「美しい・綺麗」などは定量化できない情報です。色は言葉として言うと曖昧ですが、コンピュータグラフィックスでは数値で宣言して利用しています。図形の具体的な情報は、形容詞で言えば、「大きいか・小さいか」を定量化する寸法数値が基本です。それから派生的に計算される、やや抽象的な定数(パラメータ)が幾つかあります。図形の面積は、典型的な抽象的な数値の一つです。図形の形状がどのようであるかは捨象されるからです。同じ材料から構成される、一定断面形状の柱や梁は、作用する応力との関連を付けるため、次の幾何学的パラメータを求めます。関連する工学的なパラメータについても、この節で解説します。
   1) 軸力      … 重心位置と断面積
   2) 曲げモーメント … 中立軸と断面二次モーメント
   3) 剪断力     … 断面一次モーメント
三次元的に考える部材は、捻じりモーメントによる変形に関連する数値が必要ですが、やや特殊ですので、第7章で別に扱います。上記の諸数値は、実務において頻繁に計算されます。カタログ化された材料では、上に挙げた幾何学的な性質の数値の他に、幾つかの定数が示されていますが、それらの意味を解説することが、この章の目的です。数値計算の式は単純な代数式ですが、数値計算を機械的に進めることと、計算間違いを見つけ易いようにまとめる書き方の、実務で使う習慣があります。例題解説と演習問題をこの節で扱います。まず、数値計算の原理を示すため、概念をまとめた代数式を紹介します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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