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4. 三次元的に扱う柱と梁

4.1 座標系の解釈と選択


4.1.8 寸法表示法は座標系の考え方とは違うこと

 工業製品は、部品の製作・加工の情報に図面を作成し、寸法を記入します。これは数学的に見れば座標系を決めて座標値を記入することですが、数学的な考え方とは違う実務的な習慣があります。寸法は、実物に物差しを当てて測ることで確認します。これは一方向の座標系を、場所ごとに使うことですが、いわば原始的・古典的な一次元の幾何学座標系です。曲線に沿って長さを測ることもします。物差しの始点に当たる個所が、言わば原点です。基本的には寸法数値を正の整数で表し、負の寸法を使いません。小数表示も避けます。これらのことを考えると、部材断面の重心位置は、部材内部の位置ですので、物差しを当てて直接測ることができません。したがって、製図の寸法表示には使えない数値です。部材の組み立てでは、基本的な骨組み寸法の方を使いますが、組み立ての情報には、寸法を加算した積算表示を参考情報に使い、部分と全体との関連を示します。部材の製作単位は単品ごとですので、世界座標系の中での部材の位置と向きとを示す情報が必要です。これは、幾何学的には位相幾何学的な(topology)情報を扱っていることに当たります。これらの情報を理解するのは、人の方の空間認識能力です。そうであっても、入り組んだ立体的な構造を、図面だけで理解することに限度があります。模型を作ることで検討することもします。最近はコンピュータグラフィックスを応用して、仮想世界で検討する方法(virtual reality)も応用されています。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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