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4. 三次元的に扱う柱と梁

4.1 座標系の解釈と選択


4.1.7 中立軸は眼に見えない理論的な軸であること

 図4.2に、梁を扱うときの力学モデルを示しましたが、そのx軸は、左側の支点ヒンジを原点として、桁の下縁に沿って引いてあります。実際の橋梁構造物で部材位置の寸法を決めるときの基準は、通路の基準高さ(標高)です。そこから下向きに、桁高さなどを測ってから、改めて全体の高さ方向の寸法を決めます。構造力学的に考えるとき、梁の軸線は、桁断面の重心を結ぶ線です。曲げによる応力度が0の位置ですので中立軸(neutral axis)とも言います。実際の桁断面は上下に非対称ですし、コンクリートとの合成作用などを考えると、理論的な中立軸がどの高さになっているかは分かりません。構造物の設計は、理論解析で考える力学的な骨組みを中立軸で構成しますが、実際の構造をそのようには作成できません。つまり、理論的な仮定と実際とは同じになりません。トラス橋の弦材の設計を例とすると、力学的な骨格の構造線を、腹部の鋼板高さの中央とします。弦材断面は、上下方向を非対称にしますので、図形としての重心位置が断面高さの中央とは一致しないことが起こります。そうすると、トラス弦材の軸力は、偏心して作用し、曲げモーメントも作用することになります。この違いを、設計計算で神経質に考えることもありますが、実践的には、細かな検討を省いて、設計時の許容応力度を決めるときに、それらの影響が含めてあると解釈します。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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