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4. 三次元的に扱う柱と梁

4.1 座標系の解釈と選択


4.1.4 平面構造力学の梁での応力と向き

図4.2 梁の変形応力の向き
 平面構造力学は、一平面内の力と変形だけに注目します。この条件だけの解析で、実用的にはかなり多様な応用ができます。その代表的な課題が、第2章で概説したトラスの解析と、これから説明する梁の解析です。梁は、直線部材を横位置で使い、荷重を上に載せて下向きの変形を解析します。梁を考える座標系は、長さ方向を水平座標軸xにし、外力としての荷重と撓み方向は下向きに測るのが約束です。曲げモーメント分布の説明図を描くときも、下向きを正としたグラフィックス座標を使うのが普通です(図4.2)。y軸を下向きに使うのは、数学座標系とは向きが逆ですので、左手系と言うことがあります。この約束は必ずしも特殊ではなく、コンピュータのモニタ画面の座標系などで使われていますが、しばしば正負の符号の取り違えを犯します。二次元構造力学で扱う梁の応力は、軸力、剪断力、曲げモーメントの三成分です。切りだして考える梁部材の、右側の断面に作用する外力として、応力の向きの約束を図4.2のように決めます。原理の説明のため、式(4.1)を部分的に使います。
   
応力の記号は、図4.2のように書き換えることにします。軸力と剪断力の正の向きは、座標軸(x,y)の向きに合わせ、また、相対的な変位の向きも、そう決めます。曲げモーメントは、梁を下向きに凸に曲げる向きを正とします。これは、ベクトルとして紙面の手前向きの方向を回転軸とする左回りです。座標軸を三次元的には考えないのですが、右手系に仮定したz軸を考えると、この向きは紙面を通して向こう向きです。曲げモーメントの正の向きは、右手系の定義とは逆向きです。この違いは、梁の曲げモーメントを表す弾性式で、=−EJ(dy/dx)の形で使うときに現れ、マイナス記号(−)が付きます。曲げモーメント図、剪断力図も、下向きを正とした図に描く約束です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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