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3. 二次元弾性体の応力と変形

3.2 主応力と主ひずみ


3.2.6 材料の変形は長さ変化で計測する

図3.10 コンタクトゲージ、   図3.11 ロゼットゲージのゲージ配置

 弾性体の力学を設計に応用するとき、普通、材料の或る断面の垂直応力度を計算します。剪断応力度を判断に使う割合は、相対的に少なくなります。一方、変形を扱うときは、注目点を決めて、或る向きの変位を計算します。角度変化の計算を必要とする場合も、勾配のような、長さに直して理解する方が分かり易くなります。図3.5右のγは、単位高さに対する勾配相当の横変位です。実際の構造物、または研究目的に模型を使って、理論的な予測値と比べたいとき、応力度を直接測ることができませんので、長さの変化、または歪みを測定して、これから間接的に応力度を計算します。この作業を用語としては、応力測定と言います。角度変化の方を主目的とした計測は、ジャイロコンパスなどのような特殊な装置を必要としますので、手軽に実用できません。二次元弾性体の或る個所の応力状態を知ることは、座標系を約束しておいて、三個の未知数(σ,σ,τ)を求めることですが、それを三個の歪み(ε,ε,γ)から計算します。具体的には、図3.5または図3.7で説明したように、円が楕円に変形することを測定するのですが、図形としての円に代えて、三角形の変形を測定します。三角形の三点の位置を決めておいて、その頂点間の長さ変化を測ります。実用的には、機械的なコンタクト式ゲージか(図3.10)、電気抵抗線歪みゲージ(wire resistance strain gauge)を使って電気電子的に計測します。コンタクトゲージは、あらかじめ測定個所に鋼の小球を埋め込んでおき、その間の長さ変化を、組み込みのダイヤルゲージで測ります。精度のよい計測をしたいとなると、辺の長さ(ゲージ長:gauge lengthと言います)を大きくしたくなるので、これが別の問題を起こします。電気抵抗線歪み計は、金属材料に使う場合、ゲージ長を10mm程度と小さく抑えることができて、歪みに比例する抵抗変化を電気電子的に計測できます。この歪みゲージ3成分をまとめた製品をロゼットゲージ(rosette)と言います(図3.11)。図形としての三角形の変形を考える代わりに、三辺の向き方向の歪みをベクトル的に扱います。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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