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3. 二次元弾性体の応力と変形

3.1 摩擦と剪断


3.1.1 二次元弾性体とは

 材料は、マクロに見て、等方性で均質な三次元的な連続体をしていると仮定します。前章で解説したトラスの弦材は、幅も厚みも捨象して、材料を直線でモデル化しています。これを扱う材料力学は幾何学的には1次元の座標系を使います。平面トラスの解析は、一平面内で二方向の力の釣り合いと変形を扱い、幾何学的には二次元の座標系を使う構造力学です。平面内だけで力と変形を扱う連続体の解析では、一定の厚みを持った弾性板を考えます。これを二次元弾性体として解析します。例えば、矩形断面の梁の曲げを扱うとき、薄板を縦位置にして、幅(厚み)方向に重ねたモデルを考えます。幅方向の応力と変形は扱わないのですが、これを考えるモデルが二種あります。第一は、幅方向の応力度を0にすること、第二は、幅方向の歪みを0にすることです。通常は、第一のモデルを考えます。このとき、板の面内が圧縮応力の場では、ポアソン比(S.D.Poisson,1781-1840)に相当する膨張歪みが、また引張り応力の場では収縮歪みが、高さと幅方向に出ます。軟らかな矩形断面の消しゴムを曲げると、この歪みを体験できます。しかし、矩形梁の幅を広げて、板全幅を円筒状に曲げると、幅方向には横方向の歪みが拘束されますので、第二のモデルを考えます。理論的に扱うときは、ヤング率が幾らか大きくなる条件を代入することで、第一と第二の二次元弾性体は同じ数式で扱うことができます。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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