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2. 簡単なトラスの応力と変形

2.1 静定トラス


演習例題 2.1(続1)

図2.7
(4)図2.7に示す三角形のトラス組みにおいて、部材はすべて断面積10 cm2の鋼棒とする。P=10tf、P=15 tfとして格点の変位を計算せよ。三角形の頂点Bの角度はθ=45°とする。
例解:
三角形の頂点Aの角度を90度としています。外力による部材AB,ACの圧縮力ABACは、
  ABAC/2 sin45°=7.07 tf
これによる部材BCの引張力BCは、
  BCABcos45°=5.0 tf
  σAB=σAC=−7070/10 =−707 kgf/cm2
  σBC=(5000+15000)/10 = 2 000 kgf/cm2
  εAB=εAC=(-707/2.1×106)=−337×10-6
  εBC=(2000/2.1×106)=952×10-6
 頂点Aの垂直および水平の変位は、構造力学的にはエネルギー法で計算しますが、ここでは、教育目的を含めて、幾何学的な方法で計算することを例示します(参考としてエネルギー法による計算方法も下に示してあります)。頂点Aは、部材AB圧縮で短くなることと、頂点Bを回転中心として微小角度ΔBだけ右回りに回転することに因る移動とを重ね合わせます。計算の理論式は、式2.4です。頂点Bの角度変化を求めますので、a→b→c→aとA→B→C→Aと順送りに変更して利用します。
  部材長:ab=2/cos45°=2.83m、c=4.00m
  部材歪み:εa=εb=−337 ×10-6、εc=952×10-6
  
  
頂点Aの移動は二つの成分で計算する。
  部材ABの長さの変化:Δεb=283×(−337 ×10-6)=−0.095cm
  部材ABが回転することによる頂点Aの直交方向の変位:Δ=283×1289×10-6=0.365cm
  頂点Aの垂直変位: δV=ΔL×sin45°−Δcos45°=0.325cm;下向きの変位
  頂点Aの水平変位: δH=ΔL×cos45°+bΔBsin45°=+0.191cm;右向きの変位
頂点Cの水平変位:   δH=cεc            =+0.381 cm;右向きの変位
   (備考:頂点Cの水平変位は、頂点Aの水平変位の2倍になることが検算になっています)
_________________________________________________________________

参考:ここでの頂点Aの変位の幾何学的な解法には、クレモナの図式解法(L. Cremona, 1830-1903)の原理を踏まえています。実務でのトラス計算は、コンピュータを使う計算に向いたエネルギー法が多く使われます。その方法で表計算した例を下に示します(0.325が一致することが確かめられます)。

部材

断面積
cm2

部材長
> cm

P1=1による応力(tf)

P1=10、P2=15による応力(tf)

エネルギー法による撓みの計算
δ=Σ/ (cm)

 

@

A

B

C

B×B×A/@

B×C×A/@

AB

10

283

-0.707

-0.707

14.15

141.46

AC

10

283

-0.707

-0.707

14.15

141.46

BC

10

400

+0.500

20.00

10.00

400.00

Σ

 

 

 

 

38.30

682.92

δ

 

 

 

 

0.182

0.325

科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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