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1. 引張材と圧縮材

1.3 偏心載荷を考える簡単な組み合わせ構造


1.3.3 非線形の構造モデルを扱うことがある

 図1.7の解を考えるとき、普通、バネは圧縮にも引張りにも変形することを仮定します。しかし、ここでは、荷重が偏心して作用するとき、反対側のバネの個所が浮き上がり、引張力を持たない場合の力学モデルを考えます。このバネは、圧縮力にだけ弾性的に働き、引張力にはバネが浮き上がって抵抗しないと仮定します。これを、弾性的な性質が対称では無いと言い、非線形弾性の一例です。非線形の弾性体で力と変形の計算をするときは、重ね合わせの法則を使うことができません。次ページの問題で扱う図1.9は、細い鋼棒で剛な梁を吊り下げる力学モデルを吊り下げた構造です。次ページの演習問題(2)では、この鋼棒は圧縮力も受ける、弾性的に圧縮と引張に対称性があるとして解きます。この図は図1.7を上下逆にして示したたものです。この場合、もし細い針金を使えば、圧縮力を受けると簡単に曲がってしまいますので、ここでの使い方も、非線形の力学モデルです。一方、コンクリート材料は、圧縮力にはかなり大きな耐力を持ちますが、引張り強度は圧縮耐力の1/7程度しかありません。したがって、鉄筋コンクリート構造物を設計するときの実用計算では、引張り強度が0である非線形の弾性体として応力度の計算をします。このことが、鉄筋コンクリート部材の実用的な設計計算法を、幾らか複雑にしています。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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