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1. 引張材と圧縮材

1.1 単一部材の引張りと圧縮


1.1.5 単位系を理解すること

 材料力学を数学的に扱うときは、式(1.1)〜(1.3)のように使いますが、工学的に考えるときは、数値と共に単位系(unit)を同時に考えます。この表し方は、理解し易さと扱い易さを優先します。長さで言えば、ミクロン、ミリ、センチ、メートル、キロなどの大きさの単位を使い分けます。より技術的な習慣は、なるべく桁数の少ない整数で表し、それに合うような単位系を選択します。この数値が呼び数です。理論的・学問的に正確に言いたいときの数値と、呼び数の使い分けは技術の課題では大きな議論になることがあります。例えば、力の表し方です。物理的に言うと、力は質量に加速度を掛けた単位を持ちます。しかし、力を感覚的に分かり易い数値で表すときは、地球の重力加速度を暗黙の定数とした重量を使うのが分かり易いのです。そこで、材料を、例えばキログラム(kg)で計量して、それを荷重に使いたいときは、同じ数値を使って、単位記号に重量単位を意味するkgfと使い分けます。単にkgで代用しても、混乱はしません。とこらが、迷惑なことに、SI単位系を信奉してニュートン単位Nを使うことを提案するようになりました。応力度にはパスカル単位を使うべきでしょうが、桁数の多きな数値になりますので、N/cm2のように妥協して使っています。土木構造物は地球上に建設し、宇宙空間に建設することを考える必要がありませんので、分かり易い重量単位を呼び数として使うことが実務を扱う現場では賢い選択です。この著作の数値では、保守的に見えますが、過去の計算書も参考にできるように、重量単位系を使います。ただし、SI単位系の知識を常識として弁えておくことは大切です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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