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1. 引張材と圧縮材

1.1 単一部材の引張りと圧縮


1.1.3 ヤング率とフックの法則

 弾性材料は、応力と歪みとが比例する性質のある材料です。これを次の式で扱います。

ここに、をヤング率(Young's Modulus:Thomas Young, 1773-1829)と言うのですが、一般的には弾性率(elastic modulus)、と言います。応力度の種類に応じて、弾性率には種々の定義があります。ヤング率と言うときは、引張または圧縮のような力と変形の関係を、式(1.3)のように比率で扱う場合を指します。縦弾性率横弾性率と区別することがあります。紛らわしいのですが、弾性係数剛性係数と言うときは、引張材・圧縮材の場合には、材料の性質と言うよりも、部材としての弾性的な性質の係数(パラメータ)に使います。式(1.3)は、数学的に言うとσとεを変数とした一次式です。力学的に見ると、応力度σ=0のとき歪みε=0を約束しています。を定数と見なせるときは、線形式と言います。材料をそのように扱うことができるときは線形弾性と言います。通常はこれを仮定して構造計算に応用します。フックの法則(Hooke's law;Robert Hooke,1635-1703)とは、変形が微小である範囲ならば、力と変形とが比例すると仮定できることを言います。「歪みが微小である」とは言わないことに注意します。部分的に見れば歪みが小さくても、その積み重ねは大きな変形になることがあるからです。これは弾性的な針金の曲げ変形に見られます。式(1.1)〜(1.3)が材料力学の出発点です。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2011」

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