目次ページ  前ページ  次ページ

5. 演算の約束も言葉で表す

5.3 歴史の古い幾何と代数


5.3.1 パソコンは幾何の計算に向いていない

 幾何に原理がある代数学の代表は、三角関数です。数値にして幾何学的な性質を理解したいとするとき、三つの課題を実用的に解決しなければなりません。第一は、整数で表すことができない多くの問題があって、無理数を実用的な精度にして数値計算に利用しなければなりません。これは、理論にこだわる学者は扱いたくないようです。しかし、幾何に関係する数値計算をコンピュータで処理しようとすると、あと二つの課題も理解しておく必要があります。第二の課題は、幾何学を構成する基礎的な変数となる「点、直線、平面」の三つの要素を、どのような数式で定義するか、です。点は、座標系を決めて、座標値で宣言します。線座標、面座標、立体座標から選択します。直線と平面とは、無限の多くの点の集合と考えます。無限の多さは、数値では扱うことができませんし、集合も理解が難しい概念です。第三の課題は、「点、直線、平面」を変数と考えることにしても、これら相互間に代数計算的な算法がないことです。平面幾何学で、二つの直線の掛け算に相当する処理は、交点の計算です。理論的には二つの直線の論理積です。しかし、平行な二直線は、交点がありません。つまり、例外があります。家庭でも使えるようになったコンピュータ(パソコン)は代数計算の装置ですので、幾何学的な性質の計算には向いていません。さらに、幾何の計算に向いたプログラミング言語も商業的に開発されてはいません。科学技術計算では、幾何に絡む計算が多いのです。例えば、テレビの画面で地球規模の天気予報に使うグラフィックスは、有効桁数の多い大量のデータを、高速で処理することが要求されます。ここにスーパーコンピュータの需要があるのです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2015」

前ページ  次ページ