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99. おわりに


99. おわりに

 筆者の専門は、橋梁工学です。個人的なことを言うと、敗戦(1945))を経て、戦後の復興事業の一つであった橋梁構造物の、設計から建設までの過程に、多くの実践的な経験を持ったことが幸いでした。その一つが、橋の力学的な構造計算です。橋は、何も無い空間を渡す構造ですが、その上を重量の大きな自動車や鉄道を安全に通行させる目的があります。橋は大きな寸法ですし、費用も高額になりますので、試しに作ってみて、具合が悪ければ造り直す、言わば試行錯誤が許されない厳しさがあります。古典的な力学原理を応用して設計し、架設工事までを計画しなければなりません。設計作業のかなりの部分は、材料寸法を合理的に決定するための数値計算です。戦後すぐはコンピュータを利用する数値計算が利用できない環境でした。精度のよい数値計算をするには、機械式の計算機、さらには電動化した計算機を使いこなす技能が必要でした。パソコンは、現在(2015年の時点)までに大きく進歩、発展してきましたが、数値計算技法の基本には、依然として手計算、砕けて言えば算術、の経験が必要です。単に算術と言うと、小学校の低学年で習う初歩的な四則演算を考えるでしょうが、コンピュータを巧みに利用する数値計算の技術も、算術です。これを、教育目的を考えて見直しを考えてみました。「初歩的な算術とはいくらか違うよ」と言うことを考えて、「易しくない…」の形容詞を表題に付けました。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2015」

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