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5. 演算の約束も言葉で表す

5.1 数式文字並びはグラフィックスである


5.1.3 数式の組版は特殊な技能である

 図(5.1)が示されたとき、この中の式が、なにを伝えたいかの目的説明が必要です。読者側は、その式をどう解釈するかが問われます。数式を書く側は、変数や定数の定義、などから始めます。変数や定数を表す英字は、一文字を当てます。図(5.1)では英字の説明がありませんが、暗黙の約束で、小文字のa, b, c…は定数、x, y…は変数です。記号の意味は、「JIS Z 8201 数学記号」にあります。式は、途中で式の合成や分解などの変換があっても、整理した最後の式だけを書くことをします。図(5.1)では、式番号(1)から(2)が得られる過程は省いてあります。この省略ができるのは、数学そのものが非常に論理的な道具であるためです。数式は、一並びの文に書けないこともあります。連立方程式は、幾つかの数式を縦に複数行並べます。マトリックスを表したいとき、同じ種類の変数文字を多く使いますので、数字や他の文字を下付きにして区別し、べき乗は上付き文字で表す、などをします。このような約束を使って、掛け算記号を省きます。割り算は、「/」で書くと文字並びの行数を節約できます。しかし、横線を使った分数形式が標準ですし、見易くなります。括弧も、入れ子の関係が分かるように、種類を変え、また、分数式を含むなどのときは、複数行をまとめるため、高さの高い括弧を書きます。数式を鉛の活字で版組みをするときは、特別な技能を持った植字工が作業しました。したがって、科学技術書を扱う出版社は、独特の存在価値があります。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2015」

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