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1. 数を言葉で言う

1.1 数とは何か?


1.1.3 アナログ量とデジタル量

 上の項の説明では、量が多くても、物を個数として区別できる顔があるものと、それができない場合があることの例を説明しました。個数として数えることができるとき、この数え方がデジタル的であると言うようになりました。しかし、数えられないほど多くなる集合(例えば穀物)、さらには、水のような液体は、英語では物質名詞とし、それらの入れもの工夫して、それを単位として量を数に換えて表します。英語で言う「a cup of water」がそうです。長さ、面積、体積、重さなどの物理的な性質の大小を区別するときも、物質名詞に準じた数え方をします。このとき、単位を決める道具が物差しと秤です。こちらは人為的な決め方です。曖昧さを持ちますので、アナログ的であると言うことがあります。何か絶対的なもの、または不変的なものを基準にして単位を決めたい、それが科学的な態度である、と言われるようになりました。メートル法を提案した根拠は、地球の子午線の長さを正確に測って、極から赤道までの長さを一万キロと決めたのでした。
 長さを測るときの単位も複雑です。英米のフィートポンド法では、1フィートは12インチです。ゴルフの距離を言うときのヤードは、3フィートです。日本で使っていた尺貫法では、長さの単位に、「寸・尺・間・丈・町・里」を使い分けました。これらを使うことは非科学的だと軽蔑するのは間違いです。むしろ、歴史的な経緯があって日常生活と密接につながっていることを理解しておくことが大切です。一時期、日本のゴルフ場で、ホールの長さにヤード表示をやめて、メートル法で言うことをしましたが、評判が悪く、使わなくなりました。正義感を持って、科学的な方法を提案することは、迷惑なこともあるのです。
科学書刊株式会社:電子版 「橋梁&都市 PROJECT: 2015」

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